『憲法改正:国防軍:自衛隊「加憲」への提言』No,3
『憲法改正:国防軍:自衛隊「加憲」への提言』No,3
参考資料:自衛隊加憲問題
社説:朝日新聞:2018年2月9日
憲法70年「自民党の抱えるジレンマ」
自民党の憲法改正推進本部が9条改憲に向けた条文案の作成作業に入った。
戦力不保持と交戦権の否認をうたう2項を維持し、自衛隊を明記する安倍首相の案を軸に検討する方針だ。
一方、党内では石破茂・元防衛相らが2項を削除する案を主張している。
驚かされるのは、案を提起した首相自身の国会答弁の不可解さだ。
自衛隊明記案が国民投票で否決されたら、どうなるか。首相はその場合も自衛隊の合憲性は「変わらない」と語った。
自衛隊を明記しても、しなくても自衛隊は合憲である――。
素朴な疑問がわく。それならなぜ、わざわざ改憲をめざす必要があるのか。
首相自身が言うように、歴代内閣は一貫して自衛隊を合憲としてきたし、国民の多くもそう考えてきた。
それでも発議に突き進むなら、深刻な問題を引き起こしかねない。
改正案の書きぶりにもよるが、仮に自衛隊明記案が国民投票で否決されれば、主権者・国民に自衛隊の現状が否定されたことにならないか。
首相は「現行の2項の規定を残したうえで、自衛隊の存在を明記することで、自衛隊の任務や権限に変更が生じることはない」とも述べている。
「変わらない」ことを、なぜここまで強調するのか。
推進本部特別顧問の高村正彦副総裁が、BS番組であけすけに述べている。
「2項削除は無理だ。国民投票がもたない。その前に公明党が賛成しない」
改憲の国会発議には、9条改憲に慎重な公明党の協力が必要だ。国民投票で過半数の賛成も得なければならない。
だからこそ、2項削除案に比べ、首相案は無難だと言いたいのだろう。
高村氏は一方でこうも語っている。「安倍さんが言っていることは正しい。石破さんが言っていることも間違いではない。この二つは矛盾しない」
だが、両者が矛盾しないはずがない。まず首相案で一歩踏み出し、いずれは2項を削除して各国並みの軍隊をめざす方向に進むということなのか。
「変わらない」と言い続ければ、改憲の必要性は見えにくくなる。といって改憲の意義を明確にしようとすれば、どう「変わる」のかを国民に説明しなければならない。
自民党の改憲論議は、深いジレンマに陥っている。
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朝日新聞:2018年2月7日
■9条改正、阪田私案(3項以降)
1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動
たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段と
しては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。
国の交戦権は、これを認めない。
3 前項の規定は、自衛のための必要最小限度の実力組織の保持を妨げるもので
はない。
4 前項の実力組織は、国が武力による攻撃をうけたときに、これを排除するた
めに必要な最小限度のものに限り、武力行使をすることができる。
5 前項の規定にかかわらず、第三項の実力組織は、我が国と密接な関係にある
他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされる明白
な危険がある場合には、その事態の速やかな終結を図るために必要な最小限
度の武力行使をすることができる。
さかたまさひろ 1943年生まれ。大蔵省(現財務省)に入り、2004年
から06年まで小泉内閣で内閣法制局長官を務めた。弁護士。
『正論』2018年3月号
「憲法9条改正・自由の砦を守る為に」 国際政治学者:三浦瑠璃
前略&中略・・224ページ~
昨今の政治的現実の主流を形成している発想は、憲法制定権力を平時に行使しなければいけない以上、改憲草案はなるべく当たり障りのない、現状からの変化がより少ないものであるべきというものではないでしょうか。
昨年5月に提起された、9条1項、2項を維持したまま、自衛隊の存在を書き加えた3項を追加する首相案がその典型です。私は、首相案が「保守からリベラルへの歩み寄り」を象徴し、国民的な和解と多くの政党によるコンセンサスつくりを目指したものである限りは、反対はしません。上述のとおり、保守優位の下で戦後史の一つの章に幕を下ろし、時代を前に進めることに意義を見出すからであります。
ただ、抑制的な案が、ある種の志の低さを体現するならば、日本の政治の在るべき姿としても、国民投票に勝利するための政治的戦術としても愚策であると指摘せざるを得ないと思います。穏健であることと、志が低いということは同義語ではありません。しかも会見には膨大なエネルギーが必要です。護憲信仰を捨てたくない陣営からは、手を変え品を変えたネガティブキャンペーンが展開されるでしょう。改憲を実現するには、改憲の意義が十分に解りやすく、かつ十分に意義深いものである必要があります。
私が、提案する自衛隊を憲法上に明確に位置付けた上で、そこに先進民主主義国であれば当然に有していなければならない、軍隊の民主的な統制の諸原則を入れ込むことです。戦後の日本が、軍隊は存在にしないという建前を維持するために正面から向き合ってこなかった点についてです。
過度に技術的にならずに、必要な要素を特出すれば、第一には、シビリアン・コントロールの原則を確立すること。具体的には、最高指揮権が内閣総理大臣に在ることを銘記することでしょう。この点は内閣に関する文民規定を合わせて解釈されることになります。
第二は、国会によるコントロールを明記すること。軍隊への民主的なコントロールは、行政府と立法府の双方から及ぼされるべきというのが、先進国家共通の教訓です。・・・・・以下略